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都市伝説の料理法 - ひのき

2017/12/22 (Fri) 22:11:54
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 先輩は相変わらず本を貪り食うようにしながら読んでいる。補習にもいかず、ダラダラしながら読書をしている。今日は夢野久作の少女地獄を楽しんでいる。
人間には七つの大罪があるというが先輩は特に怠惰の罪が深いらしい。
「どうも、先輩。今日も補習にはいかないんですね。そろそろやばいんじゃないっすか」
「大丈夫だよ、再試には行くから。先生にはおられるだろうけど、まあ何とかなれ。ところで後輩、君は口裂け女やてけてけとかを知っているかい?」
 先輩はいつも唐突だ。いつもわけのわからない切り出し方をする。しかしこの女、する話だけは面白いことこの上ない。ここは話を聞いてやろう。
「ありますよ。『私キレイ?』って聞いて、どう答えようと殺そうとする女と、怪奇!手だけで動く女、ですよね」
 くくっと苦笑しながら満足そうに先輩は頷いた。
「まあ大雑把にいえばそうなるね。やはり後輩のひねくれ方は面白いね。ひねくれ過ぎて逆に敬意を表したくなるレヴェルだよ。さてこのような話を都市伝説というね。しかし都市伝説の条件は何か知っているかい?」
僕は肩をすくめながら首を横に振った。
「さっぱりですね。まったくわかりませんよ、なんなんです?」
「三つある。まずあってもおかしくなさそうなことだ」
「あってもおかしくなさそうなこと?」
先輩はさっきまで読んでいた少女地獄を閉じた。僕を見て話をしてくれるのかと思ったが、違った。今度は小栗虫太郎の白蟻を読み始めながら説明し始めた。
「さて、実は口裂け女には手術で失敗して、口が裂けてしまい、綺麗な顔を持つもの嫉妬しているという設定がある。さてここで考えてみよう。ここで疑問が浮いてくる部分を考えてみよう。無論手術の失敗で生き延びられるのか?というものだ。両方の疑問を解くことができる。医者がもぐりの医者だったのさ。そのもぐりの医者は失敗のカバーが下手だった。そして失敗のカバーの失敗は更なる失敗を招く。そして負の連鎖だ。そして不細工な失敗のおかげで口裂け女の完成だ。つまり疑問の答えはあれだな、たかだか口の整形手術の失敗だからだな、癌の摘出手術の失敗でも生き残ることは少なくない、だから生き延びないわけがないだろう。いやいや、もしかしたらもぐりじゃないかもしれないけれどね」
「でも僕の地域では口裂け女は余りにも美しい容姿に嫉妬した姉たちにハサミで口を切り裂かれたっていう話でしたよ」
先輩は今日初めて本から目を上げて僕のほうを見た。とても目を大きくして輝かしている。今にも飛び跳ねそうなオーラを出している。年の割には幼い顔つきである。
「流石私の後輩君だ!そう二つ目はそれだ!流石だよ!ああ私は今にも天に召されそうな気持ちだよ!私はそれを言いたかったのだよ!」
 先輩はひと通り感動した後、また白蟻に目を戻して、そしてまた話し始めた。
「二つ目はパターンがあるっていうことさ。そう、さっきのような大きな派生をとげるのさ。怪談との大きな違いだね。怪談は少々の違いはあったとしても大筋は一緒だ。例えばそうだなぁ……。雪女の怪談だ。あれでは雪女に殺されちゃうオチと、雪女に救われる話、雪女が死ぬオチだ。でもそこまでは大差ないだろう、主人公の名前が変わっていても話の流れは変わらないだろう。ところが都市伝説は違う。あれらの場合登場人物は変わらない。だがしかし、それ以外が大きく変わる。例えば動機。私があげた例の場合は嫉妬だ。だがしかし、後輩君があげたやつの場合は気が狂ったからが動機だ」
「なるほ~」
「後輩君らしいなるほどの言い方だね。最後は発生源がわからない。ということだ。口裂け女の発生源は岐阜県と言われていたけれども朝鮮半島にもあったともいわれている。また江戸時代のころにあったとも言われている。どれがほんとかなど確かめようがないだろう。てけてけは札幌の線路で足をうしなったが余りにもの寒さに血管の切れた部分が凍り付き生きているとも言う。こいつは現実味がないので都市伝説といい難いかもしれんが、素人が聞くとなるほどと思うだろう。ここで重要なのがこのような都市伝説は専門家を相手にしていないということだ。だからこれも第一の条件に当てはまる。第二の条件にも当てはまる。後輩君の地域では全然違う話だっただろう。第三の条件にも当てはまるな、誰が話し始めたのかが全く分からん。つまり都市伝説の条件とは」
 先輩はそこで白蟻を閉じて僕を見て、ニヤリと笑った。その笑みに僕は少しゾッとしたけれども、美しい笑みだった。
「結論を言わなくてもわかるだろう。ところで腹が減った。後輩君、私に飯をおごりたまえ」
先輩は僕にむかっていった

紫秋の没みたいな感じです。なんかテーマに沿ってなかったんで変えました。らあめんと触手のせっとの前日譚だと思ってください。

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